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やっと観た映画 "Perfume"

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『パフューム ある人殺しの物語』を数年越しにやっと観た。
数年前、映画のレビューをフリーペーパーに執筆している友人から観て欲しい映画があるとオススメされたこの映画。(ちなみに私は渡辺淳一原作の映画『愛の流刑地』をオススメしました。)
最近、オリジナル香水も作ったりなんかしているので、この映画の事をしばしば思い出すもなかなか観れず。パフューム観たい観たいと言っていたら、数日前にその友人に数ヶ月ぶりにばったり出会って!これも何かのお知らせだと思って観ることに。

いやあ、これって一種のフェチな世界かも。軽いフェチではなくほんまもんの。匂いに対するフェティシズムやな。でも、ちょっとだけわかる感覚やな。かなり匂い好きの私としては。
18世紀のパリで、スゴい嗅覚、絶対嗅感みたいなのを持つスラムの男が調香師になっていくんだけれど、とある香りに魅了され、殺人を犯して行ってしまうっていう話。

映画の中には色んなニオイを発するモノが登場する。
主人公が産み落とされた魚市場から発する魚や臓物の異臭から始まり、なめし皮作業所の動物的臭い、淀んで黒い川や当時の低層の人々の汚れた衣服、当時のパリの街の臭いなど・・・。
成長しながらも水、苔、石、万物のニオイを嗅ぎ分けて行く彼。
白いバラ、赤いバラ、ラベンダー、黄水仙、調香室の瓶のアレコレ、剥いたプラム、赤毛の女の髪、処女の体臭・・・。
香りをうまく映像化している。
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ある時、いい香りに魅せられ、着いて行った先にプラム売りの赤毛の女性がいた。
彼はすうっと近づいて首筋、うなじを嗅いで・・・。怖い!
で、ビックリした彼女がもちろん叫ぶも、口を塞いで誤って死なせてしまうのであった。
が、彼は死なせたことよりも彼女自身の香りが消えて行くことがショックだったようで(愛を知らないからね)、彼女の香りを残したいと切望し調香師に弟子入り、香りを永遠に保存する方法を得ていくのであるが・・・。最近フェロモン香水などが流行っているがそれの走りやね、まあ言うたら。
好きな人のニオイがたまらんのはわかるけどな。好きな人のニオイに埋もれたいやら、そのニオイを自分に移したいとか。そのニオイの幸福感たるや、何??
わかる、わかるよ!そして、それを映像で表現してる。が、かなり行き過ぎっていう話。

さて、弟子入りの決めてとなった、彼が流行の香水の中身を割当てて完璧に作成したっていう、そんなシーンがある。香水の名前は「愛と精霊」。中身は、ライム、ネロリ、パチュリ、ベルガモット、ローズマリー、クローブ、シナモン、ムスク、蘇合香(ベンゾインみたいな樹脂系らしい)。
ムスクは動物性だから使わないけれど、これ作ってみたいなと。主人公曰く「ローズマリーが多くてヒドい香水」と吐き捨ててるけれど、笑。

その後、弟子入りした調香師(ダスティンホフマン)に香水のコンセプト(トップ、ミドル、ベースの3つのノートにそれぞれ4本ずつの香りを選び12本を選び出す。そして、13本目に自分だけのオリジナルであるファイナルエッセンスを選ぶ)や、蒸留方法を学んで精油を作り出す。
なんと楽しい作業!アロマセラピーやってる人ならこのシーンに食いつくと思う。
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バラの精油1滴を取り出すのにどれほどの花弁が使われるか(120本説、200本説、1000本説あり)を映像で示してくれている。しかし、蒸留方法では銅や鉄、ガラスなどの匂い、動物の匂いや体臭までを転写することは無理だった。
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調香師に聞いて、グラースという街なら冷浸法(油脂に香りを転写する方法)を学べるということで、旅に出るのであるが、そこでその方法を知ってしまったためにどんどんとフェロモン香水の素を作り出していくのであった。
12のフェロモン+1つのとっておきのフェロモン=世界をひれ伏させることの出来るスゴい媚薬香水みたいな。そんなん作ってはいるが、自分自身に体臭が全くないということに気づき、凹み、それって人に自分は覚えられる価値もない、愛される価値もないんじゃないかと悩むんであるが。
ここが、フランスと日本の違いで、日本なら体臭無い方がいいに決まっている。
しかし、体臭がある=セクシーっていう文化なのだね・・・。
私、基本自分のニオイはあまり好きではない。が、たまに好きな時もあり、ニオイの受け入れは体調にもよるのだろうね。微細で気付かないかもしれないが、女性は月のリズムでニオイが変わるのだ。

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最後に完成させたところで御用となり、死刑を言い渡され、煽る民衆の前で見せ物になる予定だったところを、この媚薬を着けた途端に周りが「彼はエンジェル」「彼は無罪」などと言い出す始末。民衆達は、その香りによって周りと愛を交わし合い、司祭までも戒律を破ってしまうという・・・。このシーン映画館で観たら圧巻やったやろうと思う。
そして、娘を殺された父が「騙されねえ!」と彼の前に出て行くも彼の媚薬に首っ丈になり「Oh,my son!!」と抱きつく始末。
憎しみも愛に変えてしまうすんごい媚薬を作ってしまったのであった。
放免され、自分の生まれた街へ戻って行く。

愛(擬似的だったとしても)を作り出す方法を得た彼は、愛って・・・?と最後に気がついて。人々に必要とされることこそが自分の愛なのでは?と。結局は愛やね。しかし、その必要とされる方法までもが何だか歪んでいる世界観のこの映画。

人々を惑わす魅惑の香りと悪臭、この両方を描くことで対比させているけれど、良い香りも臭みも実はどちらも同じ性質なのかも。実は「悪臭を薄めるといい香りになる」から。
便の香り成分インドールはジャスミンやネロリにも含まれているし、ムスクなんてジャコウネコの肛門分泌腺である。
精神的な疾患と求める愛の対比、これもまた根は同じような気がする。
ホメオパシー的考えだけど。
また、彼が作り出したエロス(性愛)の香水は結局のところ彼が求めるアガペー(精神的愛、無償の愛)によって出来た、みたいな。

歪んだ愛が香り立つ映画でした。
原作の方がきっと香りの表現がいいんやろうなあ・・・。
読んでみたい。
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“Just like a musical chord, a perfume chord contains four essences, or notes, carefully selected for their harmonic affinity. Each perfume contains three chords: the head, the heart and the base, necessitating 12 notes in all.

The head chord contains the first impression, lasting a few minutes before giving way to the heart chord, the theme of the perfume, lasting several hours. Finally, the base chord, the trail of the perfume lasting several days…

A truly original perfume by adding an extra note, one final essence that will ring out and dominate the others… 12 essences could be identified, but the 13th, the vital one, could never be determined”
– Patrick Suskind (Perfume: The story of a muderer)
by mandalaxsuper | 2015-03-29 01:28 | 美術